資格の取得にあたって、ダブルライセンスを検討される方が多いです。
その中でも、司法書士と行政書士のダブルライセンスが人気です。
今回は、司法書士・行政書士の資格の相性について書きます。
(本記事では、業務の親和性やどちらを先に勉強すべきか等について触れます。)
司法書士と行政書士の資格は相性が良い
司法書士の業務と行政書士の業務は親和性が高いです。
ほんの一例ではありますが、主な業務をもとに見ていきます。
会社の定款作成・設立登記・許認可取得に関する業務
司法書士・行政書士のダブルライセンスが力を発揮する場面はたくさんあります。
その中でも、代表的なのが、会社設立・事業立ち上げの場面です。
司法書士であれば、会社設立業務(定款作成・設立登記)が可能です。
一方で、行政書士であれば、定款作成業務・許認可取得業務が可能です。
(行政書士の資格のみでは、会社の設立登記業務を行うことはできません。)
ところで、会社の事業目的の中に許認可業務(宅建業・建設業・飲食業等)が含まれることがあります。
司法書士の資格だけでは、法律上、許認可の取得の業務を行うことはできません。
これから事業をはじめる方は、事業開始のスケジュール管理や諸々の準備でバタバタしています。
そんな中で司法書士・行政書士にそれぞれ依頼するとなれば少し煩雑になります。
ですが、ダブルライセンスがあれば上記すべての業務にワンストップで対応可能となります。
農地法に関する許可・届出に関する業務
司法書士のメイン業務の一つとして不動産登記業務があります。
不動産登記は、不動産の売買・贈与・相続等の権利変動が生じた場合に必要になります。
不動産の中には、農地・畑になっている土地(農地法の適用を受ける土地)があります。
仮に、農地たる土地に権利変動が生じれば、農地法所定の許可・届出が必要になります。
(具体的には、農業委員会への届出等の手続きになります。)
農地法の許可・届出の手続きについては、行政書士の資格がなければ対応ができません。
(司法書士の資格のみでは、上記の業務を行うことができません。)
ですが、ダブルライセンスにより、上記のケースにもスムーズに対応が可能となります。
契約書その他権利義務・事実証明に関する書類の作成に関する業務
司法書士としては、自身が代理する登記申請に添付する書類であれば作成が可能です。
(例:不動産売買契約書・不動産贈与契約書・遺産分割協議書等)
現行の制度上、契約書作成業務のみを司法書士の資格で受任することができません。
(ただし、遺産整理業務・企業法務等の一定の業務を行う場合を除きます。)
一方で、行政書士の資格があれば、契約書その他権利義務・事実証明に関する書類の作成が可能です。
個人間・企業間で契約書をはじめとする書面を交わす場面は少なくありません。
司法書士の資格だけでは、上記のような書面作成業務に対応できないケースも出てきます。
ですが、司法書士・行政書士のダブルライセンスがあれば対応可能な業務範囲が広がります。
司法書士試験と行政書士試験の重複科目・勉強順
司法書士と行政書士の重複する試験科目とは
重複する科目としては、憲法・民法・会社法・商法が挙げられます。
ここでは、科目ごとの特徴を見ていきます。
憲法
まず、司法書士試験の憲法では、択一(午前)で3問出題されます。
次に、行政書士試験の憲法では、択一で5問出題されます。
出題数・難易度ともに、行政書士試験の方が上です。
民法
まず、司法書士試験の民法は、択一(午前)で20問出題されます。
次に、行政書士試験の民法は、択一で9問出題されます。
出題数・難易度ともに、司法書士試験の方が上です。
会社法・商法
まず、司法書士試験の会社法・商法は、択一(午前)で9問出題されます。
一方で、行政書士試験の会社法・商法は、択一で5問出題されます。
出題数・難易度ともに、司法書士試験の方が上です。
ちなみに、会社法・商法を苦手にする行政書士受験生が多い印象です。
(会社法・商法を捨てて他の科目の勉強に時間を充てる受験生も少なくありません。)
司法書士と行政書士のどちらを先に勉強すべきか
結論を言うと、司法書士試験の勉強からはじめることをおすすめします。
仮に、行政書士の勉強を先にはじめるとします。
その場合、その後の司法書士の勉強の際に、民法・会社法・商法を勉強し直すことになります。
なぜなら、司法書士試験の方が民法・会社法・商法の出題範囲が広く難易度も高いからです。
(行政書士試験用の民法・会社法・商法の知識だけでは、司法書士試験に通用しません。)
ちなみに、行政書士試験においては、記述式でも民法が出題されます。
多くの行政書士受験生が記述式の対策に苦戦しますが、司法書士試験の合格レベルの方にとって、行政書士試験の記述式(民法)はそれほど難しく感じないはずです。
司法書士試験に通用するハイレベルな民法の知識をもって臨めば行政書士試験の民法の攻略は容易です。
その他詳細については、以下の関連記事をご覧ください。
※関連記事:司法書士とのダブルライセンス・おすすめの取得順について