司法書士試験に合格したのちに別の資格を取得する方が多いです。
一方で、別の資格の取得後、ステップアップとして司法書士の資格を取得する方もいます。
今回は、司法書士の資格とのダブルライセンス・取得順(勉強順)について書きます。
司法書士資格と相性の良い資格
まずは、司法書士の資格と相性が良い資格をいくつかご紹介します。
行政書士
行政書士とは、行政手続きや書類作成を行う専門家(国家資格)です。
主な業務としては、以下のようなもの(一例)が挙げられます。
- 官公署に提出する許認可等の申請書類の作成・提出手続代理に関する業務
- 権利義務及び事実証明に関する書類の作成に関する業務
- 契約書の作成に関する業務
- 行政不服申立て手続の代理に関する業務
詳細については、「行政書士とは?(日本行政書士会連合会HP)」のページをご確認ください。
土地家屋調査士
土地家屋調査士とは、土地建物の表題登記の専門家(国家資格)です
主な業務としては、以下のようなもの(一例)が挙げられます。
- 不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量
- 不動産の表示に関する登記申請手続の代理
- 不動産の表示に関する登記に関する審査請求手続の代理
- 筆界特定の手続の代理
- 土地の筆界が明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続の代理
詳細については、「土地家屋調査士について(日本土地家屋調査士会連合会HP)」をご確認ください。
宅地建物取引士
宅地建物取引士とは、宅地・建物の売買・交換・貸借の取引の媒介・代理等を行う専門家(国家資格)です。
一般的に、宅建士と呼ばれます。
宅建業等の一定の事業を行う場合に、宅建士の設置が義務付けられます。
ちなみに、金融業界でも宅建士の資格は優遇されます。
FP(ファイナンシャルプランナー)
FPは、資金計画やライフプランに関する助言を行います。
資格の正式名称は、ファイナンシャル・プランニング技能士といいます。
主に、不動産・税金・保険・年金等の知識を用いて、顧客へアドバイスを行います。
ちなみに、FPの資格には、1級・2級・3級の資格が存在します。
詳細については、「ファイナンシャル・プランナー(FP)とは(日本FP協会HP)」をご確認ください。
社会保険労務士
社会保険労務士とは、労働・社会保険・年金等に関する専門家(国家資格)です。
略称として、社労士と呼ばれることが多いです。
主な業務としては、以下のようなもの(一例)が挙げられます。
- 労働・社会保険手続きに関する業務
- 企業の労務管理に関する相談・指導に関する業務
- 年金相談業務
- 紛争解決手続相談業務
- 労働保険・社会保険に関する裁判における補佐人業務
ちなみに、行政書士と兼業する方が多いです。
その他詳細については、「社労士とは(全国社会保険労務士会連合会HP)」をご確認ください。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家(国家資格)です。
法令に基づき、経済産業大臣が登録する制度になっています。
主な業務としては、以下のようなもの(一例)が挙げられます。
- 企業の経営等に関する相談・コンサルティング業務
- 補助金申請の代行・補助に関する業務
- 公的業務(商工会議所等)
- セミナーでの講演活動
- 執筆活動(書籍・WEBサイト)
ちなみに、試験は科目合格制のため、働きながらめざす方が多い印象です。
その他詳細については、「中小企業診断士とは(中小企業庁HP)」をご確認ください。
おすすめの資格の取得順(勉強順)について
複数の資格を取得する場合、資格ごとの組み合わせによって、効率的な取得順(勉強順)があります。
結論からいうと、重複する科目が多ければ、難易度が高い資格から取得することをおすすめします。
なぜなら、高いレベルの知識があれば、次の資格の勉強の際に新たに勉強が不要となるからです。
もし、次の資格がより難しい資格だと、既存の知識に対してさらに上積みが必要となります。
重複する科目が多ければ司法書士を先に勉強するのが効率的
法律系資格の場合、司法書士試験の科目と重複することが多いです。
仮に、司法書士の資格を取得することが前提なら、司法書士の勉強からはじめることをおすすめします。
ご参考までに、主な法律系資格で司法書士試験と重複する科目をまとめておきます。
(ただし、司法試験については、説明を割愛させていただきます。)
- 行政書士(憲法・民法・会社法・商法)
- 土地家屋調査士(民法・不動産登記法)
- 宅地建物取引士(民法・借地借家法・不動産登記法)
- 中小企業診断士(経営法務/会社法)
- 弁理士(選択科目/民法)
- 不動産鑑定士(民法)
- マンション管理士(民法・借地借家法・区分所有法)
- ファイナンシャル・プランニング技能士(民法)
上記のとおり、多くの資格試験で民法の科目が重複します。
司法書士試験における民法は、非常に細かなところまで知識を問われる科目です。
(司法試験にも引けを取らないくらい難易度が高い科目です。)
そのため、司法書士試験に合格するレベルの方にとって、他の資格の民法のために特別な勉強は必要ありません。
他の資格の受験生にとって民法を苦手とする方はとても多いです。
その民法を得意科目にすることができれば、非常に大きなアドバンテージになります。
行政書士試験から司法書士試験への転向
自分は、大学時代に行政書士の勉強をしていました。
独学だったことと非効率な勉強をしていたこともあり、在学中には合格できませんでした。
大学卒業後には、専業受験生として司法書士試験の予備校に通いはじめました。
それと同時に、(司法書士試験の勉強に専念するため)行政書士の勉強をいったんやめました。
司法書士と行政書士とでは多くの試験科目が重複します。
そのため、司法書士合格後に既存の知識を活かして、行政書士にも合格可能だと考えたからです。
司法書士試験の学習中に行政書士試験に合格
その後、司法書士試験の勉強を始めて半年ほど後の行政書士試験を受験しました。
前回の試験から約1年のブランクがあったものの、奇跡的に合格できました。
ちなみに、その間は、行政書士試験のための勉強を一切していません。
それでも、自分が合格できた理由としては、以下のものが挙げられます。
- 行政法・一般教養の分野(司法書士試験では範囲外)が得意科目だった
- 司法書士試験の学習によって、民法・会社法の知識がブラッシュアップされた
専業受験生として予備校で勉強していたこともあり、民法・会社法のレベルが格段にアップしました。
一方で、独学で行政書士を勉強していた頃は、民法の理解があいまいでした。
また、会社法・商法については、本当に苦手科目でほとんど捨て科目でした(笑)。
行政法・一般教養で最低限の得点が取れ、民法・会社法・商法でしっかり得点できたことが大きかったです。
ちなみに、憲法については予備校で学習開始前のため、既存の知識(独学)で対応しました。
司法書士試験合格の翌年に宅地建物取引士試験に合格
司法書士試験合格の翌年、宅地建物取引士(宅建士)を独学で受験しました。
当時、宅建士の資格を取得しようと思ったきっかけは、以下のとおりです。
- 司法書士は不動産を取り扱う仕事が多く、より専門性を高められる
- 不動産業者と一緒に仕事をする上で知識が役立つ
- 自分が今後不動産を購入・賃貸する場面で知識が役立つ
- 他の司法書士と差別化が図れる
- 自分の今後のキャリアアップにつながる
不動産を取り扱う専門家として、宅建士の資格は有効な共通言語となります。
(不動産鑑定士・マンション管理士とも相性が良いです。)
実務をはじめて9年目になる今でも、宅建士の勉強をしていて良かったと感じています。
まとめ
キャリアプランに応じたダブルライセンスの取得
ダブルライセンスをめざすなら、自分のキャリアプランに応じて、戦略を立てましょう。
もし、仕事上必要であれば、司法書士よりも先に他の資格を取得するのもアリです。
(例えば、不動産会社に勤務する方なら先に宅建士を取得することが多いでしょう。)
自分は、上記の資格のほか、FP2級・簿記3級の資格も取得しました。
司法書士の仕事には、商業登記・相続関係業務・財産管理業務もあります。
相続関係業務・財産管理業務では、FPの知識が非常に役立ちます。
また、商業登記・企業法務では、簿記・会計の知識は非常に役立ちます。
社会保険労務士・中小企業診断士を取得すれば、コンサルティング業務にも特化できるでしょう。
キャリアプランを明確にし、モチベーションアップにつなげる
漠然と資格試験の勉強をしていても、けっして長くは続きません。
自分は大学1年生の頃、大学の友人に誘われるままに宅建士の学習をはじめました。
しかし、勉強をはじめてから2週間もしないうちに挫折してしまいました(笑)。
自分がなぜその資格を取得したいのか、目的が定まっていなかったからです。
一方で、司法書士・行政書士の勉強は最後まで続けることができました。
それは、自分がやりたいことが明確だったからです。
資格の勉強は、その資格で何をやりたいのか目的を明確にすることが重要です。
目標・ビジョンが明確なら、長い期間モチベーションを保つことが可能です。
また、勉強を始めてからも、将来の自分の姿を思い描ければ力が湧いてきます。
確かに、資格試験の勉強はとても大変で、挫折することも多いです。
ですが、資格により自身の選択肢を増やし、自身の価値を高めることができます。
勉強は将来の自分への投資だと思って、楽しみながら取り組んでみましょう。